ライカR Sumilux50/1.4(前期型

 友人の微鉄さんから、ライカRのズミルクス50/1.4をお借りしました。Rのズミルクス50ミリというと、つい最近、新型が出てその先鋭でデリケートな描写が話題となるとともに、旧タイプの情感豊かな柔らかな描写がいかにレンズグルメの皆さんの間で愛でられているか再認識されたばかりです。

 送られてきたレンズは手に取って眺めるだけで、スムースなフォーカシングと大口径レンズの妖しげな光りにうっとりとする実に危ないレンズであります。
 さあ、多くの人が讃える柔らかな描写、美しいボケ味は実際のところどうなのでしょう。私の腕では客観的な評価というわけにはいかないでしょうが、「下手が撮ればこのあたり」という指標で実験してみたいと思います。
(サンプルはフジのカラーネガISO400の24枚撮り→0円プリント2本から選びました)
  例によって見本写真はクリックすると大きな写真に変わります

大阪 中之島公会堂

 「都会の中のオアシス」という言葉がありますが、人間だけでなく鳥たちにとってもここは憩いの場所なのでしょうか。いや、このカモメたちの様子を見ているとこのまわりで働くビジネスマンよりもたくましいようにも思えます。
 微かにアウトフォーカスになる背景の具合が私には快い光景です。撮る方によっては背景としてもう少しボカして整理するのでしょうが、建築の美しさを少し出したいとなるとこの時代の物は細部を見てもらいたいという人もいることでしょう。このレンズの優しいボケに甘えて少し絞ってシャッターを押しました。   ライカR6 ズミルクス50/1.4

梅田クリヨンのビーフカツレツ

 最初からこれで来るか.....とおしかりの方もいらっしゃるでしょうが、私にとっては料理のお皿も撮ってみたい被写体の一つでして (^_^; レンズが明るいだけに少し暗いところでも十分に対応できそうな描写を持ってます。近接でもそんなにピントからはずれた像が崩れることがありません。優秀なレンズです。  ライカR6 ズミルクス50/1.4

武田尾温泉郷

 先ほどの「都会の中のオアシス」という言葉を「すぐ隣の」というフレーズを入れるとさしずめこのあたりになるのでしょうか。大阪梅田から30分強でこの場所につきます。何の娯楽施設もなく、ボーッと川の流れを見ながら温泉につかり、ボタン鍋を楽しむ。これも命の洗濯でしょう。
 かなり開放に近いところで微かな光を拾って撮影してますが、山の端や流れの岩の個々のトーンが再現されていて、シャドーの中でつぶれません。こういうところはツアイスのレンズと共通するものがありますが、ずっと渋くて地味で誇張した感じがないのがライツのレンズのよいところでしょう。カメラマンの水越武さんがライカのRレンズを好んで使うのはこういうところなのでしょうか。   ライカR6 ズミルクス50/1.4

神戸港でカモメを眺める

 神戸でボーとできるというと、私はこの場所を思い出します。学生時代から何度となくでかけていった場所。最近は街の憩いのエリアとして整備がすすみましたが、以前の潮臭い港もまた味わい深いものがありました。
 この日は天気が悪くて夕方でもあり、空の色が冬の日本海のような雰囲気です。前方はるかかなたに微かに日がまっているのがわかります。
 かもめに狙いをつけて寄ってきた瞬間にシャッターを押しました。本当は一枚ではなくて、何枚も撮って選ぶのでしょうが、これ一枚しか撮ってないのでカモメの形が悪いのは許して下さい。     ライカR6 ズミルクス50/1.4

神戸 ハーバーランド

 逆光ではどれぐらい撮れるのか、というとまあこれぐらいでしょうか。あぶはちとらずのレタッチをしてしまいまして、完全にシャドー化しておりませんが、この方が微妙なトーンがフィルムから採れるかなと思いまして。
 特別強いわけではないが、満足できる描写です。できたら初期型にレンズにしっかりした純正フードをつけて撮ってみたいと思います。 ライカR6 ズミルクス50/1.4

神戸 ハーバーランドへ

 柔らかい描写の優れたレンズであることは疑いがありません。では、強いアクセントは出せるかというとさてどうでしょう。日本の冬はよほど天気を選び、時間を選ばないと「強い表現は出てきません」しかたがないので、構図でちょっとラインを強調してみました。優しいけど伝えたい強調線は出ていると思うのですが。やっぱりズミクロンかな。これは。
                   ライカR6 ズミルクス50/1.4

京都 建仁寺 

 「都会のオアシス」という言葉を京都で応用するのは難しいですが、私は強いて言えばここかなと思います。京都はどこに行っても落ち着いていて、静かというと静かですが観光客という大敵がいます。近年はこのお寺の北側も場外馬券売場のせいで、随分あわただしくなりましたので、今はこの一番南側の道ぐらいでしょうか。私が高校生の時には境内一帯が静寂に包まれている気がしたのですが。 
 このレンズの優しい描写が日本風の画面にはよく調和するように思います。コンタレックスの35/2とともに貴重な存在です。国産のレンズ(たとえばニコン)というとその反対に南米や東南アジアの写真を見ると、けっこういけるなと思うのです。やはり戦場で育ったレンズという宿命があるのでしょうか。 EOS-100+アダプタリング ズミルクス50/1.4

京都 建仁寺 

 このレンズの日の光を上手にとらえてまろやかに描写するという味わいに感心します。このHomePageに出す際には、一般にPhotoShopを使ってレタッチ補正をしてますが、このレンズはあまり修正する必要がないし、するとしても他のレンズとは逆にスキャナーの設定値よりコントラストを落としてやる方向に調整してやるとレンズの特性が生き生きとしてきます。            EOS-100+アダプタリング ズミルクス50/1.4

京都 清水寺 

 夕日に輝く京都を見たい....となると石川五右衛門が上ったという南禅寺の山門か、この清水寺か....ここからの景色、意外と視角が悪くて写真にならないけれど、ボーッと街を眺めるのにはいいところです。そういうと奈良の東大寺二月堂にも長く行ってないな。
        EOS-100+アダプタリング ズミルクス50/1.4

京都 清水寺境内 

 この日は東山七条のイル・パッパラルドというイタリア料理屋さんに行く予定があったので、日没時を清水寺でプラブラ過ごしました。この先をドカドカとカメラを持って上がっていこうとすると、家内が「コレコレ、私と別れてからにしなさい」と厳しく制止されました。そういえば、そうですなあ。微妙な光りがあたりに残っていて美味しそうだったのに(--メ)。
 それにしてもこの神社、あまりに率直な看板の出し方。まるで高橋留美子の漫画に出てくる社寺仏閣のような構えです。
           EOS-100+アダプタリング ズミルクス50/1.4

京都 清水寺境内

 神社の朱の色というのに惹かれることがあります。この色彩感覚はきっと中国系あるいはさらに西方からのものでしょう。夕方、あるいは曇った空から放射状に照らす日の光を受けると他に例えようのない、立体感がでます。
 このレンズが手元にあれば鳥居探しにいそしんでしまいそうです。
 
           EOS-100+アダプタリング ズミルクス50/1.4

京都 清水寺境内 

 どれだけ寒くても、みんながやっているものはやってみたい。わかります、その気持ち。というわけで、はいシャッター!しかし、私にはその向かいでやっていた茶店の湯豆腐の方が気になりました。熱燗とともに食するとうまいでしょうな。しかし、この日はイタリア料理が待っている。            EOS-100+アダプタリング ズミルクス50/1.4

京都 国立博物館前のカフェテリアにて

 ボケ味がきれい、と書いてある割にボケ味の紹介がないじゃないか.....と苦言が呈されそうなのでこれを一枚。あまりきれいじゃないけど我慢して下さい。イタメシ屋が開くまで時間待ちで入ったカフェテリアから国立博物館をアウトフォーカスにして撮ったカットです。計算した絞りではなく、実はほとんど真っ暗なので室内撮るのには絞り開放しかなかったので勝手にこうなってしまった写真です。まあ、それでもボケの傾向はわかりますか。少してぶれしているかもしれません。なんせ1/15です。
           EOS-100+アダプタリング ズミルクス50/1.4

 結論から申し上げますと、このレンズが非常に欲しくなりました。それでニューヨークの業者とアトランタの業者に発注(お友達の分まで発注して押し売り。)してしまいました。そこは、それ、私のことですから旧タイプの割安品狙いです(怪我の素という説もありますが)。
 このレンズの何が気に入ったかというと、まず、ボケ味が前、後ろ、それぞれ華麗でしかもきわめてデリケートに絞りにより可変されていくこと(この味はフィルムスキャナー+Webではでない)。木々の葉がアウトフォーカスになっても、一枚一枚文様のようになってぼけていく、ちょうど屏風物の日本画を見るような味わいです。
 それに加えて、柔らかい描写でありながらシャドーまでじっくりと粘るように被写体の輪郭線そして驚くことに質感が残っていること。これは醍醐味です。さて、自分のレンズが来たらまた、じっくりと楽しむことにしましょう。




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