Retina I型&エクター50ミリf3.5

レチナI型 type010


 

 今回ご紹介するのは、ニューヨークのプロードウェイのカメラ屋さん、Cometa Cameraから手に入れましたレチナ1型です。このカメラは百ドル程度しかしないのですが、折り畳んだらとてもコンパクト。レンズもこの戦後どさくさのときのみアメリカから運ばれたと言われている、レンズグルメの間で話題のコダック純正のエクターレンズがついてます。



エクター50ミリf3.5
 
 
このレンズは"Made In U.S.A."という表示に値打ちがあります。レチナのシリーズのタイプの多くには、ドイツでのライセンス生産のエクターレンズが使われていて、アメリカ純正のものとは写りは特に色の描写でかなり違いがあります。おそらく放射能入りのガラス?が手に入れられなかったのでしょう。戦後のどさくさはさすがのドイツもレンズを作れなかったとみえて、アメリカからエクターレンズを輸入していたようです。

 レチナというと、クセノンやクセナーといったシュナイダー社の製品や、ローデンシュトック社のヘリゴンというレンズが有名ですが、このエクターレンズは「すごいレンズだ」とまことしやかにマニアに語られているものだったので、なんとか手に入れて本当のところどうなのか見てみたかったのです。


【作例】
 
写真をクリックして下さい。大きなサンプル画像を見れます。フィルム1本しか撮ってないので、まともな写真がないのはお許し下さい。

自宅の窓際 絞りF5.6 

 紙焼きでみればよくわかるのだが明暗のコントラストがつぶれずに柔らかい。

近所のケーキやさん 絞りF11

 もともと他の人の作例を見て、このレンズは美しい青色の発色に個性があるというイメージを持っていたが、このカメラでも同じ印象が残る。

近所の薬局で 絞りF8

 カラーバランスも良好。距離計がないとは言え、目測でも結構ちゃんと撮れる。しかし、カメラが軽すぎて手ぶれが頻発。私の腕前では使えるシャッタースピードは1/300、1/100、1/50しかないのだからちょっと辛い。

神戸地方裁判所 絞りF11

 この気持ち悪い洋風建築にビルディングを載せたようなサイボーグデザインの裁判所はどうしても好きになれない建物。ついつい手ぶれしてしまう。

湊川神社にて
 左は楠正成の墓。これはF4で撮ったのでどうかと思ったが、意外とまとも。プラスチック製の薬瓶の底を抜いて作ったフードが功を奏したか.....
 右は正月の準備を始めている屋台。近距離でも光の様子をよく描写している。戦後のどさくさのレンズとしては驚異的な性能と私は思うのだが.....


 友人に「あのレチナのエクターはどうだった」と聞かれた。私の返事は、「とてもよいよ。借金してでも押さえるべきだよ。アメリカ製のは...」。友人の持っているエクターはドイツ製。はっきり言って、もう一つ持っているクセナーの描写と全く変わらない。以前からどこが違うのだろう...と言っていたものだが、アメリカ製のは全く描写が違う。この違いをよいと評価するのかどうなのか。私はアメリカ製のエクターの方がよいと思っている。色ノリそして、シャープネスと柔らかさの両立。これが結構ちゃんと出来ていて、今のレンズより描写に何か惹かれるレトロなものがある。

 ただ、カメラとしては露出計はないし、距離計さえないし、シャッターのチャージも巻き上げとは別にしてやらなきゃならないし、ファインダーは枠がみにくいし...フィルムカウンターは私のはうまく動いてないし.....軽くて小さくてレンズが素晴らしくてというチャーミングさとどこで折り合いつけるか....でも私は買ってよかった、大事な宝物になりそう....という反応です。

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